ふろなし生活

郊外のニュータウンから、下町の長屋に引っ越してきました。

洗い場のドア係

小学校の一時期、クラスに「ドア係」なる役職があった。 「飼育係」や「黒板消し係」と同じ類の学級当番で、冬場に教室が寒くならないよう、誰かが開けっ放しにしたドアを見つけ次第閉める仕事である。誰の発案だったか記憶にないが、クラスでものろまな雰囲…

ニューヨークで入浴

という駄洒落を初めて聞いた小学生時分の喜びといったらもうたまらなくて、世の中にこんなにおもしろい言葉があったのかと友人に教えまわっていたのを覚えている。それがクスリとも笑えなくなってしまった昨今、このまじないに別のこじつけを見出せる気がし…

銭湯で高校生を叱る

毎晩通っている銭湯で高校生を叱ったのを、1週間くらい心に引きずっている。 2人で入りにきた彼らは見たことのない顔だった。 ぶったまげたことに、洗い場にスマホを持ち込んでいる。ジップロックに密閉して、身体を洗いながら器用にチェックしているのだ。 …

1日が終わる音

最寄りの風呂屋は深夜1時半まで営業している。そんなに遅くまでやっていて苦労ばかりじゃないかしらと思ったけれど、深夜はかき入れ時なのだ。おおよそ夜中の12時をまわったころに銭湯に来るような生活リズムの人間が多いのである。 午前1時7分。営業終了ま…

私の入浴作法

以前の記事で、入浴にはある種の所作が備わると述べた。毎日同じ生活動作を繰り返すことが「日常の中の洗練」に達するのである。 春から風呂のない家に住みはじめて5ヶ月目だから、今日まで130回ほど銭湯に行ったことになる。私の入浴作法はとうてい美しくな…

きたない風呂屋

銭湯は不潔だ。 そう言うと反論を受けるだろうけど、それでもハッキリとさせておきたい。 いくら店主が掃除したって、客がきたないんだからしょうがない。 見ず知らずのオッサンが撒き散らす泡が洗い立ての背中にぴとりぴとりと飛んできて殺してやりたい気持…

熱い湯に入るコツ

風呂屋の湯は熱い。私の通う銭湯の水温計は45℃を指しているし、下手すると47℃なんて殺人的な高温の風呂屋もある。家庭風呂ではありえない熱い湯がもたらす健康への好影響は医学的にも証明されている。熱による刺激が「ヒートショックプロテイン」と呼ばれる…

歌える街

週末に銭湯を使った音楽イベントを覗いた。 風呂場で歌いたくなるのは人間の本能にも思えるくらい、銭湯と音楽は非常に相性がいいであろうことは誰もが共感するはずだ。 ところが、周知の通り実際の銭湯では歌えない。おしゃべりや挨拶はあたりまえでも、歌…

枯木の入浴

銭湯へ行くと、たいてい老人が身体を洗う様子を観察している。 1年で350回、20年通った常連は2万回も同じ動作を毎日繰り返してきたわけだから、そこには「所作」とも呼ぶべき洗練が備わってくる。頭のてっぺんからからつま先までいっぺんに泡だらけにしない…